採用担当がいないベンチャーの社長たちはどのように採用を進めるべきなのか?
今回は、弊社が運営する採用コンサルティングサービス『Jobgramゲートウェイ』についてのインタビューをご紹介します。これまでさまざまな企業様の採用活動をサポートしてきた中で感じたことや、具体的なサービス内容などを弊社代表の小出がお話ししています。
小出 悠人 グラム株式会社 代表取締役
2012年、KDDIが行う起業支援プログラム「KDDI∞Labo」に当時最年少である20歳で採択され、2012年6月、株式会社U-NOTE(現 グラム株式会社)を創業。
2015年10月、スマートフォンアプリの開発、運営を行う株式会社イグニスの連結子会社になる。
2018年10月、ビジネスパーソン向けメディア「U-NOTE」を株式会社PR TIMESに事業譲渡し、グラム株式会社に社名変更。
過去の事業急拡大フェーズでの人材採用・組織づくりの小さな失敗が後に深刻なダメージとなった体験をもとに、採用拡大とミスマッチ防止を実現するHR Techプロダクトの開発運営に注力。
ー まずは、小出さんが現在の事業を始められた背景を教えてください。
小出:
最初は、大学2年生の時に起業支援プログラム『KDDI∞Labo』に採択された2012年のタイミングで、『株式会社U-NOTE』を創業しました。
当時キュレーションメディアが大流行していて、U-NOTEもイベントやセミナーの情報を集約するメディアでした。このサービスを数百万UUにまで伸ばし、PR TIMES社に事業譲渡したのが2018年のことです。
ー メディア事業からHR Techに転換しようと決断したきっかけは何だったんでしょう?
小出:
メディアを運営していた当時、実は一番困ったのが採用だったんです。
他の会社で活躍していた人を採用したのに自社で思うようにパフォーマンスが発揮されなかったり、リファラルで採用して会社のカルチャーも理解してもらっているはずなのに早期離職してしまったり。採用を進める中でさまざまな問題が起こっていました。
しかし、妥協して採用したつもりは一切なく、むしろ厳しい基準を設定して、毎回本当に採用すべきだと考えて面談や会食を重ねていました。それでも、早期離職やパフォーマンスを発揮されないことは起こってしまうんですよね。
こうした課題を解決するために、構造化面接などいくつか施策を立てていて、その中の一つに性格診断がありました。
性格診断によって取得した定量的なデータでマッチング精度を高めることができないかと色々試してみたんです。例えば、ただ面接をするのではなく、性格診断の結果をもとにその人に合いそうな業務の仮説を立てて、面接をやってみるみたいな。
ー そこからJobgramの適性検査が作られたんですね。
小出:
はい。適性検査は昔からありましたが、あくまで「能力・特性を測定する試験」というものばかりでした。でもきっと自分たちと同じような課題を抱えている会社はたくさんあるし、サービス化したら面白いのではないかと思って、事業化に踏み切りました。
また、当時はマーケティング支援のコンサル事業もやっていて、Facebook広告の成果が高かったんですが、その成果の秘訣は「その人に関わる情報を取得して、適切なマッチングを行っていること」だと感じていたんです。
このようにパーソナリティに関わるデータを握っていくことが、採用にも転用できるのではないのかと考えていましたね。
2020年6月に『適性検査クラウドJobgram』としてサービスをリリースして、そこから採用におけるミスマッチをなくすことや、データを活用した選考効率化の支援を行っています。
ー マッチングの見極めができれば、採用における課題はクリアできるのでしょうか?
小出:
実はそうとも言い切れない部分があります。
多くのベンチャーやスタートアップの採用課題と向き合ってきたのですが、基本的にミスマッチに課題を感じている企業はかなり少数で、多くの企業は「そもそもマッチングできていない」ことが採用課題にあります。
そこで立ち上げたのが、『Jobgram ゲートウェイ』です。このサービスでは、経営経験のあるメンバーが採用における自社の見せ方や各採用チャネルの活用を推進していくことで、母集団形成をはじめとした採用活動全般の支援を行っています。
Jobgramゲートウェイ:Jobgramゲートウェイは、急成長スタートアップに支持される、ダイレクトリクルーティング支援サービス(RPO・採用コンサル)です。
採用担当者0人でも年間30名採用を実現!Jobgramを用いた科学的な採用データ分析や採用フロー整備などのコンサルと、スカウト送付などの実務を通し顧客企業様の採用成功にコミットします。
ー 母集団形成において、陥りがちなパターンなどはあるのでしょうか?
小出:
よくあるのは、「採用の重要度は高いけど優先度が低くて進められない」というケースです。多くの企業では、採用責任者が入社するまでは採用活動を社長自身が推進しています。
しかし、社長は事業に加えて資金調達など経営面でもやることが多く、採用にまで手が回らないことがほとんどなんです。
そして、採用に手が回らないまま事業がさらに忙しくなり、どんどん採用にリソースが割けなくなるループに陥ることが多いように感じます。
採用にリソースを割けずに、母集団形成がなかなか進まないというのがベンチャーやスタートアップのあるあるですね。
ー 採用を頑張っているけど成果につながっていないというケースもあるのでしょうか?
小出:
残念なことにとても多いです。この場合、ほとんどが採用に関するノウハウが不足していると感じます。
特に、以下の2つを正しく認識できていないと、適切な要件定義ができません。
採用マーケットにおける自社のポジショニング
ビジネスモデルとしてどのような人を採用するべきか
前提として、採用活動における要件定義はかなり難しいんです。必須要件と歓迎要件がありますが、すべてを必須要件にしてしまっていることは往々にしてあります。
また、経験のある人を採用したい場合、候補者にとっては転職先でも同じような経験をすることになるので「候補者が転職するメリット」が明確にあるべきですよね。それを打ち出せていないケースも多いようです。
なので、適切な採用要件を定義するためには、業務内容・採用マーケットへの正しい理解が求められ、この2つを理解するには採用ノウハウの有無が一つの分岐点になります。
ー 社長が採用ノウハウを習得するのは難しいのでしょうか?
小出:
まずは、社長が業務を深く理解できるかが大きいです。
仮にCFOの採用で考えてみると、資金調達に強いタイプや管理部長タイプなど色んなタイプのCFOがいますよね。その中で、自社に合ったタイプを見極めることがまず求められます。
自社に合ったタイプの“CFO像”がイメージできたら、現在の採用マーケットの動向を把握したうえで、どのチャネルでどのように訴求することで自社に興味を持ってもらえるのかを考える必要があります。
これは個人的な意見ではありますが、おそらく採用ノウハウを習得するには採用に本気で取り組んで最低でも半年から1年程度かかると思います。
ちなみに、この期間は自分でスカウトメッセージを送ったりエージェントとやり取りをしながら採用マーケットについて教えてもらったり、候補者と話してみたり……と実際に自分で採用活動を行うことを前提としているので、ほとんどの経営者にとっては現実的ではありません。
小出:
加えて、現在の採用マーケットが激化していることも、採用活動の難易度を引き上げている大きな要因です。
特にわかりやすいのがエンジニア。エンジニアの採用マーケットにおいて、近年給料は急騰中です。他にも、カスタマーサクセス職など流行りの職種は全体的に市場評価が上がっていますし、以前は少数派だったベンチャーやスタートアップへの転職も、給与水準が上がり転職先の候補として当たり前になりつつあります。
このような背景があり、経験者を採用しようとするとスキルに対して給料が上がりすぎているという問題に直面しますし、そこまでの高い報酬を出せない企業がほとんどなので、採用要件の定義をより綿密に行うことが求められます。
ー 候補者の視点からも、採用難易度は上がっているように感じます。
小出:
その通りですね。採用マーケットとして、いわゆるダイレクトリクルーティングが主流となってきたことで、企業が候補者と直接つながれるタッチポイントは増えています。それゆえに候補者1人あたりが受け取るスカウト数は急激に増加しており、スカウトでの採用難易度は過去と比較して相対的に難しくなりました。
また、候補者が転職を考えた際に転職先の候補として思い浮かべてもらえるか、つまり純粋想起に入れるかどうかも重要です。そもそも想起されなければ、母集団にも入れません。
なので、まずは副業から始めたり、カジュアル面談などを通じたライトな接点から関係性を築くことが当たり前になってきていますし、「ダイレクトリクルーティングで容易に採用できる」という時代は過ぎ去ったと感じます。
ー 今の採用マーケットにおいて、採用が上手くいっている企業に共通する特徴はありますか?
小出:
共通点として、社長や経営陣が採用にコミットしているかが重要なポイントとして挙げられます。採用のハードルが上がって総合格闘技化していく採用マーケットにおいて、魅力的に会社を語れる社長や経営陣が採用にコミットしないのはかなりのビハインドです。
そのうえで、自社の立ち位置や見せ方がわかっている会社は強いと感じます。社会課題やトレンドを把握して、事業や会社が存在する意義を紐づけてストーリーとしてちゃんと語れる会社の採用は上手くいきやすいです。
もちろん、どの会社や事業も有意義なことをやっていると思いますが、それをストーリーとして語れるかはまた別問題で、一度聞いたら誰もが魅力的だと思ったり応援したくなるストーリーは採用において非常に重要なんですよね。
ー このようなストーリーはどのように考えるべきなのでしょうか?
小出:
客観的に自社を捉え、社会の流れなどを踏まえたうえで、第三者が魅力的だと感じる表現にまで落とし込めるかがポイントになります。これにはパターン認識も必要で、他社の例を自社に適切に組み込めるか、そもそも適切な例を知っているかも大事です。
ちなみにですが、このストーリーを自社のみで作成するのはかなり難しいです。過去に見てきた例で自社で作成できていたケースは、プロダクトに明確な強みがある、もしくはたまたまCHROクラスの方が入社してくれたという2パターンで、再現性は低いと思います。
そうした流れから、私たちの『Jobgram ゲートウェイ』では、このストーリー作りから支援を行っています。具体的な支援内容については、こちらの記事にて詳しくお話ししています。
ー サービスと企業属性の相性などはあるのでしょうか?
小出:
ベンチャーやスタートアップで一定の新規性を持っているかは大事かもしれません。しっかりとテクノロジーを活用して、社会課題や大きな負を解決しようとしているプレイヤーであれば、これが訴求の根源になるから成果につなげやすいですね。
もちろん、解決しようとしている課題はニッチでも大丈夫ですし、むしろ個人的にはニッチな課題を解決しようとしているプレイヤーを支援するのにはやりがいを感じます。
ー 他サービスとの違いも知りたいです
小出:
もし僕たちのサービスの競合になるとしたら、採用アシスタントの採用かRPOなどの採用代行だと思いますが、採用の上流工程から彼らに任せることは難しい場合がほとんどだと想定されます。
これらのソリューションはすでに採用が上手くいっていて、これから拡大していくフェーズには合っているのですが、これから採用組織を立ち上げるフェーズには合わないんです。
一方で、社長や経営陣がコミットできない場合や、今行っている採用活動の延長線で単なるリソースとして活用したい場合は、Jobgramゲートウェイをおすすめできません。
ー 最後に、採用に力を入れようと考えているベンチャー社長に向けてアドバイスをお願いしたいです!
小出:
もし自社に採用担当の方がいらっしゃるのであれば、「候補者がなぜ自社に応募して、入社の意思決定をするのか」を質問されてみてください。もし、明確な回答が得られなければ、いくら手数を増やしても採用にこぎつけるのは難しいので、自社の見せ方や魅力の源泉を優先して考えることをおすすめします。
もし採用担当の方がいらっしゃらなければ、弊社にご相談ください!(笑)
あと、これは自分でも経験したから言えることなのですが、社長の採用は孤独です。
他のメンバーは事業に集中していて、採用を理解したり配慮してくれることは少ないですし、「アジェンダは明確でないけど何となく今考えていることや悩んでいること」を気軽にメンバーに相談するのは難しいと思います。
私たちは経営目線を持った採用のプロとして寄り添えることが強みなので、しなくてもいい失敗を避けたり、採用までのショートカットを支援するだけでなく、社長の採用における孤独に寄り添っていきたいなと考えています。
現在支援している企業の社長さんからも、「同じ目線で採用について話せるパートナー」として感謝されることが多いので、少しでも悩んでいらっしゃるのであれば、まずは気軽にご連絡いただけると嬉しいです。
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(※ こちらはZoomなどを利用したオンラインMTGです)
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